日本の工務店の特徴
日本の工務店はどうなってしまうのか?
日本の住宅産業で取り上げましたが、工務店を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。
今後力のない工務店はどんどん淘汰されていくことは間違いありませんが、だからと言って大手ハウスメーカーのシェアがどんどん上がっていくとも考えていません。
なぜなら、工務店にはハウスメーカーにはない良さもあり、そうした良さを生かし、お客様のために継続的に企業努力を続ける工務店は、全国規模で今後も一定数以上のポジションを維持し続けるだろうからです。
工務店の特徴ですが、これは一般的によく言われる工務店の弱みからアプローチしてみたいと思います。
大手ハウスメーカーと比較した地域密着型の工務店の特徴についてご理解いただけると思います。
ブランド力が弱い。
確かに、全国の一般消費者へのブランドの認知度・訴求力という点については、大きな資本力を持ち、地場の工務店とは比較にならないほど多くの広告宣伝費を使って、マス媒体によるイメージ戦略を展開する大手には太刀打ちできないことは疑う余地はありません。
しかし、地域密着型の工務店は、全国展開している訳ではないので、全国規模での一般消費者に対するブランド浸透力は必要ありません。その地域での地道で堅実な仕事ぶりが信頼力を生み、それがその地域でのブランド力向上につながっていきます。
したがって、工務店にとってのブランド力は、大手と比較する必要はないのです。工務店のブランド力は、工務店の総合力評価の帰結なのですから、地域に根ざした顧客本位の家づくりがいつかブランド力として返ってきて、それがその地域では大手以上のブランド力になります。
そうした大きな地域ブランド力を持つ工務店は全国に沢山存在しています。
企画・提案力が弱い。
この点についても、一般的には確かに指摘されます。
ハウスメーカーでは、企画・提案に携わる専門のスタッフがいますし、お客さまに対する提案も3D画像などのヴィジュアルに訴えて、イメージしやすい、わかりやすい内容になっています。
ただし、ネックとして、ハウスメーカーでは自社が開発した様々な規格商品から大きく外れた提案はやりにくいところがあります。
よく耳にするケースとしては、お客さまがあれこれ、こうしたいと営業に伝えても、「それは、コストが大幅に上がるから、やめた方がよろしいですよ。」と言われるケースです。
大手では基本的に規格化された商品を提案しているので、そこからはずれた規格外の家づくりがやりにくい、そして、もし対応するとしても、そのお客さまのためだけのオーダーメイドになるため、コスト大幅増になりやすいことが背景にあります。
その点、工務店には柔軟性があります。
お客さまとの良好で密なコミュニケーションが大前提になりますが、お客さまの要望に細かく対応できる柔軟さがあるのです。
そうは言っても、工務店も変化していく必要があります。いくら結果的に柔軟性のある対応がとれても、そもそも最初の段階で、お客さまの要望を具体的にカタチにして、提案できる力がなくてはどうしようもありません。
ハウスメーカーのようなお客さまにとってわかりやすいプレゼンテーション手法を積極的に取り入れていく必要があるでしょうし、総合的な企画・提案力を磨いていく必要があります。
営業力が弱い。
これも、その通りです。小さな工務店では、大手のように営業専門で多くの人を雇っているところはあまりありません。社長自らが営業マンというところが多いですし、営業担当がいても少数だと思います。
ただし、この点については、裏を返せば、お客さまにこの営業の分の労務費を負担してもらう必要はないため、コストがおさえられるメリットになります。
そして、更に言えば、今や営業は単純に人の力だけではなくなっています。
インターネットやその他の手法を生かした総合的な営業力が求められる時代となっています。インターネットを利用した営業手法は、小資金で対応できるため、地域密着型の工務店でも、工夫次第では、大きな営業効果を上げられるようになってきたと言えるでしょう。
日本の工務店の生き残る道
このように、一般的に言われる工務店の弱みからその特徴を見てきましたが、それらの弱みが単純に弱みにならないということについてはご理解いただけたかと思います。
地域密着型の工務店には、大手にはない良さが沢山あるのです。
これからは、顧客志向をベースに、お客さまごとの要望に沿ったきめ細かい提案、機敏な対応、見積りの透明性などが求められ、その結果としてのお客さまとの信頼関係に基づいた家づくりが、更に重要になってくると思いますが、これは大手のハウスメーカーであれ、工務店であれ、目指す方向性は同じで、工務店にもできることです。
地域での信頼をベースに、確固たるポジションを得られたならば、将来的に縮小傾向が避けられない住宅業界でも、工務店は生き残っていけるはずです。
そうした意味において、地域密着型の工務店にも活路が見出せると思いますし、そのためには、大手追従ではない工務店の特徴を十分に生かした企業戦略が必要になってくると思います。
【第2部:これからの注文住宅に求められること】
公開日:
最終更新日:2016/09/23