日本の住宅事情
住宅に対する不満は継続して減少傾向
住宅及び居住環境に対する評価について、国土交通省が5年に一度調査している「住生活総合調査」の調査結果(平成25年)を見てみましょう。
それによると、平成25年の住宅に対する評価は、「非常に不満」が3.3%、「多少不満」が18.8、不満率は22.1%となっています。この数字は、昭和58年の不満率38.4%から減少傾向が続いています。(特にここ15年程度の改善幅は大きくなっています。)
持家と借家別で見てみると、持家の不満率が21.0%、借家の不満率が24.9%で、借家の不満率が3.9%高くなっていますが、この差は昭和58年の14.0%から小さくなっています。
戦後の住宅の絶対数が不足していた時代からバブル期を経て、少子高齢化、人口減少社会に突入している現在に至るまでかなり社会環境が変化してきていますが、その中で日本の家づくりもかなり社会環境の変化に対応して、快適性、安全性などが改善され、居住環境への満足度が高まっているのはいい傾向だと思いますが、まだ不満に感じる部分は依然として残っています。
「住生活総合調査」で不満率の高い項目を上から5項目挙げてみると、「高齢者等への配慮」に対する不満率が依然として最も高く53.5%、次いで「地震時の住宅の安全性」が48.6%、「冷暖房の費用負担などの省エネルギー対応」が46.7%、、「住宅のいたみの少なさ」が45.2%、「住宅の断熱性や気密性」が44.0%となっています。
この不満率を平成15年と比較してみると、「高齢者等への配慮」や「冷暖房の費用負担などの省エネルギー対応」は大きく改善しているものの、「地震時の住宅の安全性」や「住宅のいたみの少なさ」はほとんど改善していない点は気になるところです。
【引用:平成25年「住生活想像調査」結果】
このような結果を見ると、これからの家づくりの満足度を上げるためのポイントは「高齢化対応」、「地震に対する安全性」、「省エネ対応」、「耐久性」あたりになってくると思われます。
住宅寿命は長くなっている
住宅寿命については、前の建設省(現在の国土交通省)出した「建設白書」(1996年版)にある記述を見てみると、日本の住宅寿命に関して、「日本の住宅の寿命は、過去5年間に除却されたものの平均で約26年、現存する住宅の平均年齢は約16年と推測されるが、アメリカの住宅については、平均寿命が約44年、平均年齢が約23年、イギリスの住宅については、平均寿命が約75年、平均年齢が約48年と推測され、日本の住宅のライフサイクルが非常に短いものになっている。」とあります。
この「建設白書」が出た1996年から20年経過し、現在の日本の住宅の平均年齢は22-23年になっていますが、野村総合研究所の予測では2030年の住宅の平均年齢は29年まで伸びる見通しとなっています。
2009年に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行されたこともあり、近年では「100年住宅」や「ロングライフ住宅」をうたって、その住宅寿命の長さをアピールするハウスメーカーも多く、住宅の性能自体の向上もあり、潜在的な住宅寿命は確実に伸びています。
また、住む人の意識や経済状況もかなり変化しているのも平均寿命を押し上げている要因の一つでしょう。
環境負荷を考慮して、家をメンテナンスしながら長く暮らす人が増えたことや、環境負荷を考慮する以前に経済的な事情で長く住まざるを得ない人が増えたという背景があるものと推測します。
いずれにしても、世帯数が減少していき、住宅ストックの効果的な活用が要請される世の中で、既存住宅の重要性が今後高まっていくことは間違いありません。
高騰する建築費
日本の住宅建築費はどのようになっているでしょうか。
前述の通り日本の住宅寿命は伸びているとは言え、欧米に比べて未だに短いのですが、住宅寿命が短いからと言って、建築費は決して安くありません。逆に未だに圧倒的に高いと言われています。(材料費、労務費、経費、粗利益率どれをとってもみても、欧米水準と比較してとても高いものになっています。)
近年のニュースを見ても、建築資材の高騰、人件費の高騰など、建築費が下がる要素は全く見つけることができません。
昔から、日本人は、その収入の割には、豊かな生活を送れていないと言われていますが、住宅費の総支出に対する割合が高いことが、その大きな要因になっていると推測できます。
この状況を引き起こしている要因の一つは、日本の住宅産業構造にあります。この点については、「日本の住宅産業」において、取り上げています。
こうした建築費上昇も新築住宅から既存住宅へのシフトの一つに要因になっていくと思います。
変化しなければ淘汰される時代
このように、日本の住宅事情について、いくつかの側面から見てきました。
現在、フロー経済型の大量生産、大量消費の時代は過ぎ去り、グローバルの潮流の中で、ストック経済型の地球環境に優しいものづくりが志向されています。
更に急速に少子高齢化や人口・世帯減少が進む社会環境の中、日本の住宅事情もどんどん変化してきています。
ハウスメーカーや工務店などの住宅建築の担い手である業者サイドも大きく変化していかなければ生き残れない時代になってきたことは間違いありません。
【第2部:これからの注文住宅に求められること】
公開日:
最終更新日:2016/09/23